受賞報告
受賞課題:がん医療におけるIVR手技の新規開発と臨床応用に関する貢献
瑞友会賞(臨床部門)受賞のご挨拶
放射線IVR部長、医療情報管理部 室長
佐藤 洋造(H10卒)

この度は、瑞友会賞(臨床部門)に選出いただき、身に余る光栄に存じます。また、瑞友会会長の松本隆先生をはじめ、選考委員の先生方に厚く御礼申し上げます。
私は1998年に名古屋市立大学を卒業後、放射線科(大場覚教授)に入局し、放射線診断・治療の研修を終えた後に、Interventional Radiology(IVR)領域を中心として診療に従事しておりました。そして2002年に当時中央放射線部助教授であった伴野辰雄先生からの「愛知県がんセンターに行ってみたい?」の一言で、関連病院ではなかった愛知県がんセンター放射線診断部に赴任しました。その後は厳しくも暖かい指導の下、肝動脈化学塞栓療法(TACE)・ラジオ波焼灼療法(RFA)などの局所治療を中心に肝細胞癌患者を主科として診療しつつ、画像ガイド下生検、経皮的ドレナージ、中心静脈ポート留置、緊急止血などのIVR業務に従事してきました(ちゃんと?画像診断もやっていました)。約18年間愛知県がんセンターで勤務した後、2021年度からはがん研有明病院の超音波診断・IVR部に副部長として赴任し、オンコロジー領域のIVRの研鑽をさらに積んできました。2023年度からは古巣の愛知県がんセンターに戻り、現在に至っております。
大学を離れた後は一貫してがん専門病院に勤務していたこともあり、日常臨床と並行して臨床試験などの研究にも関わってきました。オンコロジー領域のIVRの臨床研究を行うJIVROSG(Japan Interventional Radiology in Oncology Study Group)の班員としてこれまで多くの臨床試験に参加し、各種IVRの保険承認(近年のRFAの適応拡大など)にも貢献してきました。また肝動脈塞栓療法研究会主導の“進行肝細胞癌に対するソラフェニブと肝動脈塞栓療法の併用療法の第Ⅱ相試験”の研究事務局も務めさせていただきました。最近では大腸癌肝転移に対するTACEの特定臨床研究DEBIRI-Japanのプロトコール委員も担当しております。
2012年には韓国のASAN Medical Center(2700床以上)のIVR部門の見学に行く機会に恵まれ、約100件/日のIVR検査を高いレベルで施行しているのを目の当たりして、自分ももっと研鑽を積まないといけないと感じたのを鮮明に憶えています。それからは国際学会での発表や英語論文の執筆にも、少しずつですが力を入れるようになりました。最近では(自分の好みもあってか)アジア圏の学会に参加する機会が多くなり、2019年にはミャンマー、2024年にはバングラデシュで、海外の先生方と共にIVRの技術指導に従事するという貴重な体験もさせていただきました。
今回の受賞に関しては、今年度に愛知県がんセンターから名古屋市立大学に戻れられた岩田広治先生に色々とお世話になりました。岩田先生とは学生実習の時からのご縁で、愛知県がんセンターでも医療情報関連業務では直属の上司として、長い間ご指導ご鞭撻いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。また末筆ではございますが、名古屋市立大学医学部ならびに瑞友会の益々の発展を祈念いたしております。今後とも何卒よろしくお願いいたします。
-
- 1998年3月
- 名古屋市立大学医学部卒業
-
- 1998年4月
- 名古屋市立大学病院放射線科入局
-
- 2002年5月
- 愛知県がんセンター放射線診断部医員
-
- 2005年4月
-
愛知県がんセンター放射線診断部医長
(現:愛知県がんセンター放射線診断・IVR部)
-
- 2021年4月
- がん研有明病院超音波診断・IVR部副部長
-
- 2023年4月
- 愛知県がんセンター放射線診断・IVR部医長
-
- 2023年6月
- 愛知県がんセンター医療情報管理部 室長(兼務)
-
- 2024年4月
- 愛知県がんセンター放射線診断部・IVR部放射線IVR部長
- 佐藤洋造氏 授賞理由
-
がん治療における臓器横断的なInterventional radiology(IVR)の分野を専門としています。愛知県がんセンターのスタッフ、癌研有明病院を経て、2023年より再度愛知県がんセンターに復帰した後、2024年より放射線IVR部長として活躍中です。日本のIVR分野を牽引する医師であり、海外での講演・技術指導なども積極的に行っています。学会発表・論文は多数あり、学術面で優れた業績を上げているのみならず、院内では他科からの絶大なる信頼を得ています。がん医療におけるIVR手技の開発と臨床応用に関する貢献は顕著であります。