この度は、令和5年度名古屋市立大学医学部瑞友会賞（特別賞）の大変栄誉ある賞を受賞させていただき、身に余る光栄に存じます。また、瑞友会会長の松本隆先生をはじめ、選考委員の先生方に厚く御礼申し上げます。

私は2008年に名古屋市立大学を卒業し、公立陶生病院で初期研修医ならびに小児科専攻医を経た後、2012年に名古屋市立大学の小児科（新生児・小児医学分野）に入局しました。その後は、名古屋市立大学病院ならびに関連病院で小児科医として勤務し、また、大学院へ進学し博士号を取得いたしました。その間に様々な先生方や症例との出会い、学会活動などを経て、医師として研究者として少しずつ成長することができました。これも、新生児・小児医学分野の齋藤伸治教授や医局の先生方のおかげであり大変感謝いたします。

学生や研修医の頃から、精神科や心療内科にも興味があり、小児科医になってからは特に発達障害（神経発達症）や心身症を専門領域として診療を行なってきました。発達障害や心身症の患者様は千差万別で二人として同じ患者様はいません。また、診断に役立つバイオマーカーは存在せず、使用できる薬剤も極めて限られています。そのため、患者様の特性から診断を行い、本人や保護者と話をする中で診療・治療をする必要があります。日々の診療では、自分自身の診療スタイルを前面に出すことが求められ、その点が発達障害診療の魅力だと考えています。

新型コロナウイルス感染症（COVID-19）は小児では重症化することは極めて稀です。一方で、臨時休校、運動会をはじめとする様々なイベントの中止、給食での黙食、ソーシャルディスタンスの確保など、生活環境の変化に強い影響を受けました。特に発達障害の子どもは環境の変化や見通しの持てない状況が苦手であり、私の外来でも不安定になる患者様が多くいました。そこで、当時、大学院修士課程に在籍していた川岡奈緒実さんと共に、臨時休校が発達障害の子どもの情緒・行動面に与えた影響に関して調査を行い、定型発達の子どもに与えた影響との違いを論文や学会発表等で報告いたしました。その成果をご評価いただき、令和5年度瑞友会賞（特別賞）をいただくこととなりました。新型コロナウイルス感染症は５類感染症となり、子どもたちの生活も感染拡大前と同じ風景に戻りつつあります。しかし、新たな新興感染症が発生し、子どもたちの生活に大きな影響を与える日がくるかもしれません。その際に、今回のコロナ禍での知見を活かして、より良い支援を行なっていければと考えています。

2023年8月に名古屋市からの寄附により名古屋市立大学に「こころの発達医学寄附講座」、名古屋市立大学病院に「こころの発達診療研究センター」が開設され、私自身も籍を移しました。この寄附講座/センターでは、医療・福祉・教育が一体となり発達障害の患者様の就学前から成人期のすべてのライフステージにおける診療、また、その基盤となる研究や人材育成を目指しています。今回の瑞友会賞の受賞を励みに、これからも臨床・研究に邁進するとともに、発達障害診療の面白さを伝え、次の世代を育成することが恩返しになることと思う日々です。このたびは、誠にありがとうございました。今後とも、瑞友会諸先生方のご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。