受賞報告

<瑞友会賞 臨床部門>
受賞課題:COVID-19に対しての臨床・研究両面での実績

瑞友会賞(臨床部門)受賞のご挨拶

[更新日:2024年02月22日/掲載日:2024年02月22日]
医療法人髙田 髙田内科クリニック
理事長・院長 髙田 統夫(H9卒)
髙田統夫

この度の栄誉ある瑞友会賞(臨床部門)の受賞、身に余る光栄に存じます。松本隆瑞友会会長をはじめ、関係の諸先生方に厚く御礼申し上げます。

私は1997年に名古屋市立大学を卒業し、故・藤浪隆夫先生(S23卒)の第三内科に入局、翌年に大学院生となり岡本尚先生(現名誉教授・教室会員)の主宰する細胞分子生物学(分子医学研究所 分子遺伝部門)に出向致しました。臨床的には循環器内科学を、研究面ではHIVに関連する転写因子の研究をすることになりましたが、このとき得られたウイルス学的知識が、四半世紀を経て役立つことになりました。

2006年に父の跡を襲い中村区で開業し、以来市井の一開業医として過ごしていたところでCOVID-19のパンデミックに遭遇致しました。もともと当院は典型的な地域の医療機関として慢性疾患のほか感冒症状を訴える患者を多く診療していましたので、COVID-19の出現は他人事とは思えず事態を注視していました。

ある日、医師会の用事で中村保健センターを訪ねたところ、神谷美歩センター長(S62卒)から、肺炎になっているかどうか写真を撮って欲しいが対応する医療機関が見つからない旨の話をお聞きし、致し方なく受け入れたのが当院のコロナ診療の始まりです。

当然ながら写真撮影だけで済むはずもなく、なし崩し的に2020年8月から発熱外来を開始し、以来2023年8月まででおよそ9000人の発熱患者を受け入れ、3000人余りのCOVID-19患者を診断・治療することになりました。なるべく断ることなく、全例を聴診し重篤な気管支炎や肺炎を見逃さないように努めるなど、拙いながらも全力で診療にあたり、結果医療逼迫の余波で中等症Ⅱまで診療することとなりました。パンデミック早期から診療をしていたせいか、中村区とその周辺の区だけでなくあま市や清須市からも診療依頼が舞い込みました。「検査をやりすぎだ」とか、「金儲けで患者を集めている」といった陰口も随分耳にしましたが、患者さんから「診てくれてありがとう」という、本来応召義務のある我が国では聞かないであろう言葉をいただいたことが励みになりました。

発熱外来を開始して3ヶ月くらい経ったとき、大学院生時代に岡本研究室で一緒に過ごした仲で、歯科におけるウイルス学研究の第一人者でもある畏友、日本大学歯学部感染症免疫学講座の今井健一教授に、SARSCoV-2の研究に誘われました。「社会貢献しよう」という殺し文句には逆らえませんでした。

唾液検査の概要についての総説(歯界展望.2021;136(3),137(5)を皮切りに研究に取り組み、発熱患者727例につき検討し症状からCOVID-19を診断することは困難であるとの報告を第244回日本内科学会東海地方会でしました(約15年ぶりの学会発表でした)。また唾液中のウイルス量を定量することによって、従来株に比べデルタ株で感染性が高まったのは唾液中のウイルス量が単純に多いからであり、またオミクロン株における感染性の強さは、唾液中の液体成分中のセルフリーウイルスが多くエアロゾル感染しやすいからだ、ということを見出し、論文化することができました(JAMA Network Open. 2023;6(1):e2250207)。Impact factorが13を超える雑誌に掲載される論文に、開業医でも携わることができたのは僥倖でした。

今回の受賞をきっかけに、開業医でも臨床や研究の第一線に立つことができるし、その根本は名古屋市立大学で培った知識と人脈であると改めて感じました。コロナ禍もひと段落した現在、仲間たちと中村区で慢性腎臓病の地域連携パスの運用を始め、また慢性心不全についても同様の仕組みを作ろうとしています。創立80周年を迎えた伝統ある名古屋市立大学医学部の卒業生として恥ずかしくない働きをこれからもして参りたいと思いますので、皆様方には今後ともなお一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

略歴
  1. 1997年
    名古屋市立大学医学部卒業
  2. 1997年
    同上 第三内科入局・臨床研修医
  3. 2002年
    名古屋市立大学大学院医学研究科修了・博士(医学)
  4. 2002年
    名古屋市立大学病院臨床研究医
  5. 2004年
    名古屋市立守山市民病院内科副部長
  6. 2006年
    髙田内科クリニック院長
  7. 2020年
    医療法人髙田理事長
  • 名古屋市立大学医学部臨床講師
  • 日本大学歯学部感染症免疫学講座併任講師
  • 名古屋市中村区医師会副会長
  • 名古屋内科医会理事
  • 川澄会(瑞友会開業医分科会)幹事
髙田統夫氏 授賞理由

平成9年本学卒、第三内科を経て平成18年に開業された。コロナ禍において、診療・検査医療機関の指定が始まる前の2020年8月から発熱患者の受け入れを自施設で開始し、3年間で軽症から中等症Ⅱまで、2600人を超えるCOVID-19患者を診療した。また症状についての統計的解析結果を学会で報告、さらにSARS-CoV-2の株間における感染性の差について検討し「セルフリーウイルス」の概念の重要性を指摘する論文を発表するなど、COVID-19に対して臨床的に地域で多大な貢献をされたのみならず、研究面でも積極的な活動を行ってきた。

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