受賞報告
受賞課題:医学・医術および公衆衛生の向上発展および地域医療の推進への貢献
瑞友会賞(社会部門)受賞のご挨拶
監事 伊藤 宣夫(S48卒)
この度は思いもかけず瑞友会賞を受賞することになり、選定頂いた同窓会に感謝するとともに、対象になった様々な事柄をなすにあたって協力、支援をして下さった皆様に厚く御礼を申し上げます。
審査委員長の飯田教授が言及された対象項目「豊田加茂医学会」「愛知医療通訳システム」「愛知県広域予防接種システム」等は私が各々豊田加茂医師会理事、愛知県医師会理事及び副会長在籍中に自らの職責として担当した仕事の中に含まれる事柄で私一人が成したというよりその場で関係した方々の力で成しえた事柄だと思っております。
中でも実現化するまで大変苦労したのが「愛知県広域予防接種システム」でした。予防接種法の改正前でも後でも予防接種の実施主体は市町村長で実務は愛知県54市町村の担当部署が担い各々独自のやり方で実施しています。それまでは被接種者は住民票のある市町村で予防接種を受けねばならずかかりつけ医や主治医が別の市町村の場合でもそこでは接種を受けられません。入院等どうしても主治医やかかりつけ医に接種してもらう事情がある場合は自分の市町村に主治医やかかりつけ医のいる市町村長への「接種依頼書」発行の申請をしますがかなり手間がかかり一部の市町村ではなかなか対応してくれない事例もあったようです。その為愛知県小児科医会から度々愛知県医師会に改善の要望があり、その都度愛知県医師会から愛知県にその要望を伝えていましたが長い間全く進展しませんでした。この時点で大都市を抱える他のどの都道府県でも通常市町村の枠を越えて予防接種のできるところは何処にもなかったのです。
この問題を解決すべく県医師会内に臨時の委員会を立ち上げ説明会も複数回開きましたが予防接種に関しては一家言ある医師も多く方針方向等細部に至ってなかなかまとまらず、県医師会一丸となって対処できる体制ができるのに1年かかりました。
次の難関は各市町村担当者への説明会で、何回やっても県医師会の方針を説明する私への批判反論が強く毎回吊し上げに会うような状況だったのを目の当たりにして、市町村担当者を集めてくれた愛知県の責任者もこれでは予防接種の広域化などとてもできないと述懐していた程でした。しかしその都度県医師会の委員会等で市町村担当者の批判、反対意見の中身を検討しそれらに対する対応や改善案をだしていくうちに批判や反対の材料も次第に無くなり、54市町村の中から数か所の代表を出してもらい共同で具体的な制度設計を行うことができるまでになりました。接種料金の支払いも愛知県国保連合会にその為のシステムを構築してもらって全てがまわる仕組みが出来上がりました。これらの過程にも1年の歳月を要しました。ここで成果を上げねばこの問題は永遠に解決できないという重圧は感じていましたが、相手にした方達は皆医師にしろ市町村の担当者にしろ予防接種に深く関わってこられた方ばかりで既に自分はこう考える、こうやってきたというものを皆持たれており私たちの提案にすぐには賛同頂けないのも道理でした。話し合い、耳を傾けながらお互いの接点を見つけていくという態度に徹したことが最終的にゴールに到達できた最大の要因だったと思います。
名古屋市立大学は日本経済新聞が隔年に行っている全国の大学を対象にした「大学の地域貢献度調査」で2回連続総合ランキング1位に選ばれました。今や企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)も強く意識される時代となっています。企業業績の好調さが地域社会の発展と連動していくような関係は大学に置き換えても全く同様と考えます。大学が発展していくことで地域社会も発展しそこに住む人々を幸福にしていくという道を名古屋市立大学は歩んでおり、同学どころか今や多くの大学もそれと軌を一にした方向を目指しているように感じます。同様に私自身も自らの健康寿命の続く限り何かしら社会に関わりその発展と人々の幸福の為に貢献できる道を歩むつもりです。
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- 1973年
- 名古屋市立大学医学部卒業
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- 1974年
- 名古屋市立大学大学院博士課程生理系
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- 1978年
- 名古屋市立大学医学部生理学助手
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- 1980年
- 静岡済生会病院内科
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- 1984年
- 花園内科開業
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- 1992年
- 豊田加茂医師会理事
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- 2004年
- 愛知県医師会理事
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- 2012年
- 愛知県医師会副会長
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- 2016年
- 愛知県医師会代議員会議長
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- 2019年
- 愛知県医師会監事
- 伊藤宣夫氏 授賞理由
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昭和48年に名市大を卒業され、基礎医学研究に従事されたのち、昭和55年から内科医としてご活躍、昭和58年に豊田市内にて花園内科を開院されました。人格高潔にして温厚実直、卓越した識見と技能を備え、医道の実践者として奉仕の精神に徹し、社団法人豊田加茂医師会理事をはじめ、公益社団法人愛知県医師会の副会長等の要職をご歴任されました。地域医療の発展に貢献した功績は大であり、愛知県医師会副会長として、関係団体をはじめ、マスメディア、国会、地方議員、行政、有識者等の幅広い人脈を活かし、より良い医療政策の実現に向け適切な提言、要望を行うなど、責任ある職責を果たしたことは大きな功績である。