受賞報告

<瑞友会賞 臨床部門>
受賞課題:直腸がんに対するロボット手術

瑞友会賞(臨床部門)受賞のご挨拶

[更新日:2021年11月16日/掲載日:2021年11月16日]
名古屋市立大学 消化器外科学
病院助教 牛込 創(うしごめ はじめ)(H19卒)
牛込 創

この度は、名古屋市立大学瑞友会賞(臨床部門)という大変に栄誉のある賞を頂きまして身に余る光栄に存じます。山本会長、飛田副会長をはじめ、御選考頂きました瑞友会の先生方に厚く御礼申し上げます。また、これまでご指導賜りました名古屋市立大学消化器外科学・瀧口修司教授をはじめ医局員の先生方にもこの場をお借りして御礼申し上げます。

私は医局の関連病院で2年の臨床研修医期間を経て6年間外科医として働いてきました。

その後医局のご厚意により2016年から2年間、がん研究会有明病院でレジデントとして大腸癌について学んできました。そのまま名古屋に戻ることなく2018年から大阪国際がんセンターの大腸外科スタッフとして更に2年間大腸癌診療を行った後に、2020年に名古屋市立大学に戻って参りました。

大腸癌診療における手術手技や化学療法は以前と比して大きく変化してきています。

結腸癌は治療方針が殆ど定まってきましたが、直腸癌は狭い骨盤内に存在し重要な臓器と密接しており手術難易度が高くリンパ流も複雑であることから、結腸癌と比して予後が悪くその治療法は常に議論の的となっておりました。しかし2018年になって新たな手術機器として3D画像、多関節機能、手振れ防止機能をもったロボット手術が保険適応となり、名古屋市立大学では瀧口教授の下、全国でもトップレベルで取り組んできました。ロボット手術は難易度の高い直腸癌手術に非常に適していると考えられ、当院のこれまでの短期成績では3.6%という良好な縫合不全率(全国平均約10%)であり、今後良好な長期成績も期待されています。

一方で、直腸癌治療における化学療法や放射線治療の占める割合は年々増加しています。特に進行直腸癌に対しては手術のみでは長期成績の改善に限界があり、術前後の化学療法、術前化学放射線療法を上手く組み合わせた集学的治療を行うことで予後の改善が見込めるという考えが広まってきています。

すなわち直腸癌治療で良好な成績を出すためには、直腸周囲の解剖を熟知しロボット手術の力を十分に引き出し、最新の知見を十分に練り込んだoncologicalな考えを持つことが一つのカギとなると思われます。ほぼ全ての直腸癌をロボット手術で行う名古屋市立大学において、更に手技を洗練しoncologicalな考えを深め、新たなエビデンスを構築し、若手のみならず教育者の育成を行う事が今後の課題と考えています。

改めまして、本賞の受賞にあたり、外科のいろはから研究の面までご指導ご鞭撻を賜りました先生方、私が国内留学するにあたりご尽力頂いた先生方、留学する事でご迷惑おかけしました先生方に深く御礼申し上げます。これまでの活動を糧にし、名古屋市立大学のブランド力をさらに高めていけるよう精進致します。今後とも変わらぬご指導ご鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

略歴
  1. 2007年
    名古屋市立大学医学部卒業
    刈谷豊田総合病院 臨床研修医
  2. 2009年
    刈谷豊田総合病院 外科医員
  3. 2014年
    豊川市民病院 外科副医長
  4. 2016年
    がん研究会有明病院 消化器外科 レジデント
  5. 2018年
    大阪国際がんセンター 消化器外科 診療主任
  6. 2020年
    名古屋市立大学 消化器外科 病院助教
牛込 創氏 授賞理由

大腸がん手術数の日本で最も多いがん研究会有明病院でのレジデント経験の後、大阪府立病院機構・大阪国際がんセンターでスタッフとして数多くの大腸がん治療に携わってきた。大腸がん手術、治療戦略における研究において多数の論文発表を行った。その経験を生かし直腸がんロボット手術に着手し、次世代のロボット直腸がん手術のニューリーダーと目されている。今後の一層の活躍によって本学のロボット手術全体が飛躍することが期待される。

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