受賞報告

<瑞友会賞 学術部門>
受賞課題:各種悪性腫瘍に対する強度変調技術を主とした高精度放射線治療の精度管理と有効性に関する研究

瑞友会賞(学術部門)受賞のご挨拶

[更新日:2021年11月16日/掲載日:2021年11月16日]
名古屋市立大学医学研究科 放射線医学
准教授 富田 夏夫(とみた なつお)(H13年卒)
富田夏夫

この度は、第15回(2021年度)瑞友会賞(学術部門)受賞の栄誉にあずかり、身に余る光栄に存じます。選考委員の先生方、瑞友会の諸先生方に心より御礼申し上げます。

私はこれまで20年あまり医師として働くなかで、臨床一本で奮闘してまいりました。歴代の学術部門賞を受賞された先生方の多くは、その基礎研究を評価された結果と思いますので、少し異例かもしれません。医師になってからこれまでを振り返りますと、医師3、4年目に愛知県がんセンター放射線治療部にレジデントとして勤務したことが分岐点だったと思います。当時愛知県がんセンター放射線治療部は、年間新規患者数1300件を誇り、また私は入院患者さんも指導医1名と一緒に30名以上担当していましたので、文字通り朝から晩まで病棟と外来で過ごす日々でした。放射線治療は、脳から骨盤、また四肢軟部に至るまで各悪性腫瘍の特徴から放射線生物学&物理学の知識が必要とされる分野です。専門領域の習得には、各種癌と患者さんの状況を的確に把握する診察から始まり、放射線治療計画、副作用の管理など一定期間の集中的なトレーニング・研修を経験する必要があります。また何よりこの時期に放射線治療だけでなく、化学療法や緩和ケアなども行い、ベッドサイドでの経験を多く積めたことが、今の私の診療における基礎となっており、また臨床研究発案のインスピレーションとなっています。

一昔前の大学は研究第一であり、英語論文を公表していれば、業績を評価されていたのかもしれません。しかし最近では、臨床医は、経営上及び地域貢献という意味でもしっかり臨床も行うことも求められています。当教室の原眞咲先生(名古屋市立西部医療センター副院長)も瑞友会社会部門賞受賞時の挨拶文で、“3本柱のはずの教育や臨床には業績評価の明確な物差しが存在しない”と仰ってみえます。「教育」と並んで、「臨床」も評価されにくい側面があるかと思いますが、今回の受賞は私にとって大変励みとなりました。これからも、患者さんの診療を第一として地域医療を守り、臨床研究も推し進め、他診療科の先生方との連携を重視し、名古屋市立大学のさらなる発展に微力ながら寄与できるように、誠心誠意努力いたす所存です。また今年度、東部・西部医療センターの大学附属病院化が実現しました。大学附属病院化のメリットの一つとして、スケールメリットを活かすことがあげられます。この臨床研究が実行しやすい環境を最大限生かして、現在未解決のclinical questionに対し、自ら前向き臨床試験を計画して、世界に発信できるエビデンスを創っていきたいと思います。

最後になりますが、瑞友会の益々の発展をお祈り申し上げます。

略歴
  1. 2001年
    名古屋市立大学医学部医学科 卒業
  2. 2001-03年
    名古屋市立大学病院放射線科 臨床研修医
  3. 2003-05年
    愛知県がんセンター放射線治療部 レジデント
  4. 2005-07年
    名古屋市立大学病院放射線科 臨床研究医
  5. 2005-09年
    名古屋市立大学大学院
  6. 2007-18年
    愛知県がんセンター放射線治療部 医長
  7. 2018年-
    現在 名古屋市立大学放射線科 准教授(講師級)
富田夏夫氏 授賞理由

高精度放射線治療技術が急速に普及し、周囲正常組織への線量低減による高線量投与が可能となり、放射線治療の精度管理は不可欠である。富田氏は前立腺癌術後放射線治療における強度変調放射線治療等による高精度技術と有害事象の関係を確立し、またこの技術を用い胸部放射線治療における肺動脈への線量が肺障害に関与することを世界で初めて示した。筆頭論文20報余を精力的に発表し、高精度放射線治療の精度管理と発展研究に全力を集中している。

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