受賞報告

<瑞友会賞 臨床賞部門>
受賞課題:臨床における画像診断からの貢献

瑞友会賞(臨床賞部門)受賞に際して

[更新日:2020年11月25日/掲載日:2020年11月25日]
名古屋市立西部医療センター 放射線診療センター長中央放射線部長
原 眞咲(はら まさき)(S58卒)
原 眞咲

昭和58年卒、放射線科(診断専門医)の原 眞咲です。名誉ある瑞友会賞(臨床部門賞)受賞者の末席に加えていただけたことに心より御礼申し上げます。

卒業後、放射線医学講座に入局し、豊川市民病院で4年、大学に20年、西部医療センターで7年と画像診断分野(特に胸部)で研鑽を積んで参りました。入局当時は57年卒6名、58年卒5名を加えて20名程度の小医局でしたが、歴代の河野通雄教授、大場覚教授、芝本雄太教授および医局員の情熱的な入局勧誘さらにその後の教育への注力により、現在では200名に及ぼうとする全国でも有数の放射線科医局に成長しました。この過程に参画できたことに誇りに感ずるとともに、残された時間でさらなる発展に向け努力したいと思います。

産婦人科、小児科、麻酔科医不足についてはマスコミ報道により一般に広く知られています。一方、放射線科医の充足率がこれら3科よりも低く、米国の3分の1に過ぎないことは知られていません。最近、放射線科が作成した画像診断報告書の未確認による医療事故が報道されていますが、原因の一つに、診察時に、報告書作成が間に合わないことがあります。マンパワーにより解決可能であり、放射線診断専門医数の拡充が急務となっています。

西部医療センターでは常勤診断医9名と近隣他大学の関連病院(名古屋医療センターは診断専門医3名)と比較して恵まれて見えますが、診断専門医は5名であり、若手4名に対する教育を考えると余裕はありません。さらに、大学の半数のIVR手技を実施しており、午後は2~3名が読影業務を離れます。私自身が副院長業務の合間に1日フル回転で読影しているのが現状です。また、人員確保への投資として、初期研修医の1年目に1ヶ月、2年目に最大8ヶ月放射線科を研修するプログラムを提供し、早期からの専門教育を実施しています。毎年2名程度の放射線科希望者が在籍しており、将来が楽しみです。本邦最高レベルの放射線診断サービスを目指しスタッフ一同努力しております。

20年間の大学勤務では、研究を中心に教育さらに高度な臨床と3人分の業務を要求されました。毎日自分の体力や精神力の限界まで勤務し続けても仕事がつきず、無間地獄の様相でした。大学は研究第1であり、学位を取る先生、教授を目指す先生がたが研究に励み、大学で唯一の業績評価である「IFの高い英語論文」を輩出する場です。一方、3本柱のはずの教育や臨床には業績評価の物差しが存在しません。特に「教育」は将来を左右する大問題のはずですが、臨床以上に評価されにくく、必然的に、十分な時間が割かれていません。個人的には、M5BSLを2コマ担当し、3時間の講義を2回、計6時間切々と放射線科の魅力を文字通り休憩なしに訴えています。落語と同様の古典芸能の域に達しており、3時間があっという間に過ぎてしまいます。また、専門医取得前の若手に対しても、細かくかつ厳しい指導を心がけております。口うるさい爺ですが、少しでも優秀な放射線科医を養成するため、今しばらく気力を振り絞って参ります。

東部・西部医療センターの大学病院化が現実のものとなりました。1800床の病院群創設には大きな夢が感じられます。臨床および教育能力に秀でた方々を適正に評価し登用することが不可欠と思います。多様性に富む人材評価を期待し、名市大のますますの発展を祈願しつつ、受賞のご挨拶といたします。

原 眞咲氏 授賞理由

本邦の放射線診断専門医数は米国の3分の1であり、改善は容易ではない。昨今、読影の確認ミスの報告が増加しているのは、放射線診断専門医の不足に依るところが多い。学生、研修医の放射線診断医への勧誘に注力し、全国的にも最多の入局者数を達成させてきた。同時にCT、MRI、核医学検査において高水準の読影技術を提供することによって診断能力の向上を図り、臨床医の負担軽減を図ってきた。それによって西部医療センターの初期研修医、後期研修医の臨床教育において、国内最高水準のサービスの提供を目指している。

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