受賞報告
受賞課題:長年にわたる、愛知県小児医療、小児保健、および小児感染症領域における貢献
2020年度瑞友会賞拝受の御礼
院長 志水哲也(しみず てつや)(S38卒)
昨年暮れに満81歳を迎えましたが、思いも掛けず2020年度瑞友会賞(社会賞部門)を拝受することとなり、厚く御礼申し上げます。さて、小生の祖父(医師)が祖母(愛知県の女性薬剤師第1号)と共に明治40年に志水醫院を開院、祖父及び父の代と続けてきました。このような志水醫院を小生が志水こどもクリニックと改称、開業小児科医として40年という節目を迎えました。
この40年間小児科の医師として、どのようなことができたのか、また外来における小児医療の中で、貢献ができたのか、手前味噌かもしれませんが、記録にある資料から少し考えてみました。
近年、小児科外来における感染症の診療は以前とは異なり軽症化してはいますが、今でも小児科医にとり重要な地位を占めています。中でもウイルス性疾患がその大半を占め、その流行を捉え、病因検索や疫学、更に合併症や予防などにつき観察することは、開業小児科医の外来診療におけるプライマリケアの充実、活性化に極めて重要で、できる限り正確な情報を提供することにより、患者さんとのインフォームドコンセントに繋がり、退屈な外来を少しでも楽しいものにすることができるのではないかと考えてきました。
また開院当初から、約40年に亘り嘱託医をしています乳幼児養護保護施設では、ウイルス感染などの施設内集団発生を度々経験し、発病状況の把握、病因ウイルス検索のための検体確保、そして早期の隔離や隔離解除などでも、看護師や保育士さんなど施設の職員とともに考え実行してきました。
さて、小児科外来や施設内の乳幼児集団感染などから、何か学ぶことがあれば、その経験などを研究会や学会で発表するように心がけてきました。しかし臨床研究は医学的に正当なものでなくてはなりません。指導者のいない開業医の研究では、ともすれば独りよがりであったり、誤りであったりする可能性は否定できません。これを防ぐためには、「出来る限り研究会や学会で報告、それを論文として残し、他者にその正当性を評価してもらう必要がある」と小児科開業医で日常の外来における臨床研究の草分け的存在であった、松江市の西野先生(最近85歳で他界されました)が述べておられました。そこでウイルス性疾患として興味ある症例や集団発生などがみられた場合、その状況の観察、ウイルス検索などの結果をまとめ、学会などで発表し、なるべく論文として残すことが必要と考え、できる限り実行してきたつもりです。その結果、この40年間における研究会や学会発表は59回を数えました。
観察できたウイルスやその病態は色々ありましたが、エコー6型ウイルスによるヘルパンギーナの流行、エコー7型ウイルスによる髄膜炎や発疹症、インフルエンザB型感染による一過性筋炎や、コクサッキーB1ウイルスによる流行性筋痛症、レオ2型ウイルスによる熱性疾患の施設内流行、手足口病の病因ウイルスの検索等々、色々興味ある観察が出来ました。幸い当院が感染症サーベランス事業の定点であったこともあり、当院における感染症の観察が、少しでも生かされることが、極めて大切なことと考えています。ウイルスの検索などに色々ご協力頂きました、愛知県衛生研究所ウイルス部並びに、春日井保健所生活環境安全課の皆様には厚く御礼申し上げ稿を終ります。
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- 昭和38年3月
- 名古屋市立大学医学部卒業
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- 昭和38年4月~昭和39年3月
- 名鉄病院インターン
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- 昭和39年4月~昭和43年3月
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名古屋市立大学大学院医学研究科
内科系小児科 医学博士甲第65号
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- 昭和43年4月~昭和54年1月
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名古屋第二赤十字病院小児科部長
愛知県総合看護学院、名古屋市立大学非常勤講師
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- 昭和54年2月~現在
- 小牧市にて志水こどもクリニック開設
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- 昭和54年4月~平成26年9月
- 社会福祉法人乳児院・竜陽会理事
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- 昭和63年4月~平成14年3月
- 小牧市医師会理事
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- 平成5年4月~平成23年3月
- 愛知県小児科医会理事
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- 平成6年4月~平成10年3月
- 小牧市医師会副会長、小牧市准看護学校校長
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- 平成10年4月~平成14年3月
- 同上会長、小牧市医師休日急病診療所長
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- 平成14年4月~平成20年3月
- 社団法人日本小児科学会代議員
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- 平成17年4月~平成23年3月
- 愛知県小児科医会会長
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- 平成18年4月~令和2年4月
- 社団法人日本小児科医会理事
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- 平成19年4月~平成26年9月
- 社会福祉法乳児院竜陽会理事長
- 志水哲也氏 授賞理由
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昭和38年に名古屋市立大学医学部を卒業後小児科大学院に進学。昭和43年名古屋第二赤十字病院小児科、昭和44年同院小児科部長、昭和54年より小牧市に「志水こどもクリニック」を開設し、現在まで一貫して小児ウイルス感染症(インフルエンザ、ノロ、ヒトパレコ、アデノ、RS、レオ、コクサッキー、エンデロ、エコー等)に関する多数の論文を刊行された。地域の学校医、幼稚園医、保育園医などを20年以上勤め、とくに小児感染症予防・治療による地域医療の充実に尽力した。平成14年から小牧医師会会長、平成17~23年には愛知県小児科医会会長を勤めた。