受賞報告

<瑞友会賞 学術部門賞>
受賞課題:リンパ系腫瘍に対する分子標的療法と免疫療法の開発研究

「瑞友会賞・学術部門賞」受賞のご挨拶

[更新日:2019年10月31日/掲載日:2019年10月31日]
名古屋市立大学 血液・腫瘍内科学
成田朋子(なりた ともこ)(H19卒)
成田朋子

この度は、栄誉ある瑞友会賞(学術部門)を頂きまして、誠にありがとうございます。瑞友会の山本会長をはじめ、ご選考頂きました先生方、これまでの研究にご指導頂きました先生方に厚く御 礼申し上げます。

私は医学部入学時から、血液内科医を志し、がんの研究に興味を持っておりました。学生のころから多くの研究室の先生方より、基礎研究の技術と将来の医学に向き合う姿勢に触れ、臨床医となってからも、診断や治療の難しい様々な場面の課題と向き合いながら、がん患者さんに役立つことは何かと考えておりました。

受賞対象となりました研究課題「リンパ系腫瘍に対する分子標的療法と免疫療法の開発研究」については、大学院時代から着手した、多発性骨髄腫や成人T細胞性白血病などのリンパ系腫瘍についての研究全般についてです。

多発性骨髄腫については、予後不良で稀な染色体転座を持つt(14;16)陽性の多発性骨髄腫における全国調査を行い、臨床的特徴として細胞表面抗原CD56が陰性であることを報告することができました。ここでは、全国の医師と協力して共同研究を達成する心強さとその責任を実感することができました。また、ボルテゾミブという標準治療薬の難点である、薬剤耐性を克服するために、多くの患者さんの腫瘍細胞や血清を用いて、バイオマーカーを探索し、治療感受性低下に関わる因子(ATF family)の検証や特徴的なmicroRNAの発現について次世代シーケンスを用いた網羅的解析による検証を行いました。ここでは、患者さんに研究参加同意を頂く中で、医学への期待を受け、歴代の先輩医師等から大切に収集・保存され たサンプルを有効に利用することができました。

成人T細胞性白血病については、ウイルス抗原であるHBZに対する特 異的免疫応答を同種骨髄移植後の患者さんの末梢血単核球を用いて詳細に解析したり、また、成人T細胞性白血病に対するfirst in class drugとしてCDK9阻害剤を用いたモデルマウスに対する抗腫瘍効果を明示したりすることができました。

これらのトランスレーショナルリサーチは、多くの協力者があって成し得たことであり、頂いた多くの熱意と責任をもって、今後も、次世代の医師を指導しながら、自らも医療の発展を目指して邁進していきたいと思います。

現在は、厚生労働省健康局がん・疾病対策課にて、「第3期がん対策推進基本計画」に基づいた日本のがん対策全般に携わらせて頂いております。はじめは、医系技官という慣れない環境に戸惑いながらも、様々な業務の目指す先には、患者さんの未来があることへの責任を胸に、また、自身の持つ臨床・研究の経験を行政に生かすべく、日々精進しております。多くの同僚や上司に支えられ、施策を立案・実行する点については、行政も研究も通じるところがあると実感しております。

最後に、血液・腫瘍内科学の飯田教授をはじめ、研究にご指導頂きました先生方、様々な形でご協力頂きました関係スタッフや患者さんに心から感謝申し上げます。

略歴
  1. 2007年
    名古屋市立大学 医学部卒業 名古屋記念病院 初期研修医
  2. 2009年
    名古屋記念病院 血液・化学療法内科医員
  3. 2011年
    名古屋市立大学 血液内科臨床研究医
  4. 2015年
    名古屋市立大学大学院医学研究科博士課程修了 名古屋市立大学血液内科病院助教
  5. 2019年
    厚生労働省健康局がん・疾病対策課課長補佐(人事交流)
成田朋子氏 授賞理由

筆頭著者の論文4報(平均IF:8.970)(2013~2017)。血液がん治療に対するレベルの高い研究姿勢である。多発性骨髄腫の研究では、全国調査を行い、臨床的特徴として細胞表面抗原CD56陰性であることを報告した。また予後因子にかかわる主な染色体点座のより効果的な病理学的免疫染色診断を確立した。さらに成人T細胞白血病ATLについての研究についても多くの研究を展開するなど、リンパ系腫瘍における広範的な臨床研究により新規治療薬の開発に貢献が期待できる研究を実施している。

ページ上部へ