受賞報告
受賞課題:へき地医療と農村医学発展への功績
「瑞友会賞・社会部門」受賞のご挨拶
院長 早川富博(はやかわ とみひろ)(S50卒)
この度は、瑞友会賞(社会賞)の受賞という栄誉を授かり、同窓会員皆様への感謝と共に、厚く御礼を申し上げます。その受賞対象となりました内容は「へき地医療と農村医学発展への貢献」であります。
私は、故武内俊彦教授の下命により、平成8年から愛知県厚生連足助病院に赴任し、23年が経過しました。その間、過疎と人口減少に直面するへき地における数々の課題を解決するために、平成8年から訪問看護・診察開始、平成10年から足助町における医療・福祉の共通カルテの電子化を進め、平成11年から在宅療養患者を対象にした音声・画像・バイタルデータを同時に作動できる遠隔診療システムなどを構築してきました。そして、豊田市への合併後の平成16年から足助病院での電子カルテの導入と同時に、電子カルテを地域へ開示(近隣の診療所、ケアマネージャなどへの)することや、それに伴い地域の関係者を対象とした臨床講義をするなど、多職種連携に努めてきました。
その後、関係者の連携だけでなく、地域住民が参加する「三河中山間地で安心して暮らし続けるための健康ネットワーク研究会」を立ち上げ、隔月の定例会、年1回の「香嵐渓シンポジウム」を開催するなど、住民とともに、保健・医療・介護事業を通じて地域づくりに邁進してきました。その中から生まれた、月2回の「ロコモ予防教室」「脳イキイキという認知症予防教室」、月1回の「院長サロン」を現在も継続開催しています。これら活動内容を日本農村医学会の理事及び理事長として全国に紹介、農村における介護予防、生活支援を含めた「地域包括ケア」の方向性を示してきました。また特別プロジェクト「農村の食と健康部会」のリーダーとして研究を進め、1万人からの「食と生活と健康に関する意識調査」を実施して、その成果を報告してきました。平成29年からは学会を中心に、1万人を対象とした介護予防コホート研究を立ち上げ、5年間の前向き調査を開始して、介護予防の要因を解明する予定としています。
愛知県の「へき地医療拠点病院」である足助病院に勤務して、少子高齢地域の先進地区における医療の実践を通じて、地域における保健・医療・福祉を包括的に調査・研究し、地域住民に対する包括的ケアを実践することができるようになってきました。足助病院の理念は「安全・安心・満足の医療・福祉(介護)・保健活動を通じ中山間部地域住民の生活を守り、自然と共生できる文化的地域づくりに貢献する」です。少子高齢社会でかつ過疎である当地域の課題は山積みですが、医療、福祉だけにとどまらず生活支援など、地域住民と共に持続可能な地域を目指して、より一層努力したいと考えています。同窓会員皆様のご協力、ご支援をお願いして、御礼とさせていただきます。誠にありがとうございました。
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- 1975年
- 名古屋市立大学医学部卒業後、旧第一内科入局
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- 1976年
- 愛知厚生連 足助病院内科医
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- 1979年
- 名古屋市厚生院 内科
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- 1984年
- 名古屋市立大学第一内科、助手(1989年-1989年Yale大学留学)
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- 1996年
- 愛知厚生連 足助病院内科部長
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- 1998年
- 愛知厚生連 足助病院 院長
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- 1998年
- 日本農村医学会評議員
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- 2005年
- 同 理事 編集委員
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- 2011年
- 同 副理事長
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- 2013年-2017年
- 同 理事長
- 早川富博氏 授賞理由
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愛知県厚生連足助病院に勤務して以来長年に亘り、電子カルテを駆使した先進的な地域健康ネットワークの立ち上げを主宰し、住民とともに地域の健康向上と維持、介護、包括ケアの構築に力量を発揮してきた。また日本農村医学会の発展にも尽力し、2018年には国際農村医学会総会を会長として開催した。