受賞報告

<瑞友会賞 臨床部門賞>
受賞課題:ナビゲーションシステムを駆使した脳外科手術

瑞友会賞受賞の挨拶

[掲載日:2016年10月25日]
渡邉 隆之(わたなべ たかゆき)
平成12年卒 名古屋市立医学部卒
豊川市民病院 脳神経外科・医長
渡邉 隆之

この度は、名誉ある瑞友会賞(臨床部門)を受賞させて頂き、誠に有り難うございました。ご推薦およびご選考頂きました先生方ならびに会員の皆様に心から感謝致します。

今回受賞の対象となりましたテーマは、脳神経外科領域におけるナビゲーションシステムの活用、応用についてです。私が豊川市民病院に赴任した平成17年春に、ちょうど当院で初めてナビゲーションシステムが購入され、現副院長の松本隆先生より、使用法をマスターし新たな適応を模索していくように委託されました。これは、元々新しいことを考えるのが好きな自分にとって、とても大きなチャンスでした。従来のナビゲーションシステムの概念は、主に大学病院などの先進医療機関でのみ使用され、対象疾患も脳腫瘍などごく一部の手術に限られており、かなり敷居の高いシステムという印象でした。しかし、当院で導入したブレインラボ社製のナビゲーションシステムは、使用法が格段に簡便で、しかも大きさもコンパクトであったため、その機動性を生かし、工夫を重ねながら、脳腫瘍だけでなく、脳卒中、頭部外傷、水頭症などあらゆる分野の疾患の手術に応用してきました。その結果、約10年で700例を超える症例に使用し、現在では欠かすことのできない機器へと発展しました。また、平成23年にはナビゲーション用プランニングソフト(iPlan)も導入し、より機能を強化して、利便性のみでなく、手術の安全性、確実性にも大きく貢献できるようになりました。このソフトを応用することで、術前に3D画像でシュミレーションができ、手術アプローチの選択、解剖の確認、知識の整理、さらには若手医師の教育にも役立てることができます。これらの情報は多くの学会で紹介しており、より多くの施設で役立てて頂けるとうれしく思います。

近年、臨床の場でも様々な医療機器が開発され導入されていますが、それをどう使いこなすかは、現場の人間に委ねられています。せっかくのいい機械を無駄にしないよう、日々創意工夫を重ね、使い続けることが重要だと思います。私も今回の受賞を機に、よりよい医療を提供できるよう、さらに邁進していきたいと考えています。

略歴
  1. 平成12年3月
    名古屋市立大学医学部卒業
  2. 平成12年4月
    名古屋市立大学病院研修医
  3. 平成13年3月
    国立東静病院(現静岡医療センター)
  4. 平成17年3月
    名古屋市立大学大学院終了 医学博士
  5. 平成17年4月
    豊川市民病院脳神経外科副医長
  6. 平成22年4月
    豊川市民病院脳神経外科医長
資格
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
  • 日本神経内視鏡学会技術認定医
  • 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
濱本 周造氏 授賞理由

腎結石の発症頻度は急増し、生涯罹患率は男性では7人中1人、女性では15人中に1人にまで達している。また5年再発率は約50%と高いことから、腎結石の成因の究明と再発予防の確立は世界的に重要な課題となっている。

私たちは、無機物質に着目したこれまでの治療に限界を感じ、有機物質としてオステオポンチン(OPN)を同定し、その分子機構を世界に先駆けて解明した。その中で、腎結石の初期形成における超微細構造を電子顕微鏡で観察し、腎結石の核となる結晶が腎尿細管細胞に付着し、取り込まれて、細胞内で成長している現象を捉えることに成功した。次いで、この腎結石の形成機序に関わるものとして、結石マトリックス成分であるオステオポンチン(OPN)には、機能的ドメインとなる細胞接着部位(RGD配列)とカルシウム結合領域があることに着目し、「OPN遺伝子内のRGD配列やCa結合領域を遺伝子組換えにより機能欠失させることで腎結石は抑制される」ことを発見した。この一連の成果をふまえ、OPNのRGD配列に近接したアミノ酸配列に対するOPN抗体を作成し、腎結石を抑制することに世界で初めて成功した。現在は、ヒトへの臨床応用に向けた研究を引き続き計画している。つまり、ヒトの腎結石形成における新しいバイオマーカーの探索や新規治療法としての分子標的治療への発展を目指した研究を実施している。

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