受賞報告
瑞友会臨床部門賞を受賞して
この度は、名誉ある瑞友会賞臨床部門を戴き誠にありがとうございます。瑞友会理事および選考委員の先生をはじめ、整形外科の関係者、教室と病院の関係者の皆様、ならびにご推薦いただきました先生方に厚く御礼申し上げます。
私はこれまで、脊椎手術の侵襲をできるだけ少なくする術式の研究を行って参りました。今回受賞の「脊椎疾患に対する低侵襲手術」は現在の我々脊椎外科医にとって永遠のテーマです。低侵襲手術を評価する際に、様々な項目があげられます。術中の評価としては、1)皮切の長さ。 2)筋剥離、靭帯切除範囲。 3)骨切除量と骨切除範囲。 4)術中出血量と手術時間。 5)神経障害(モニタリング)などがあげられます。また術後評価としては1)筋損傷の程度(MRI,CT評価)。2 ) 術後出血量。 3 ) 術後血清学的検査(CPK,CRP…)。4)術後疼痛の程度(鎮痛剤の有無)などがあげられ様々な観点から評価を行う必要があります。また術者にとっての低侵襲なことも忘れてはいけないと我々は考えています。術者にとっての低侵襲とは、1)手術時間。 2)手術姿勢。3)被曝量。4)術中ストレス などがあげられます。低侵襲手術のアウトプットは顕微鏡や内視鏡に代表されるインスツルメントの開発であり、アウトカムは術後の症状の改善、すなわち手術部位の残存腰痛の軽減だと考えます。両者の間に食い違いがないように低侵襲手術を追及していくべきであると考えてきました。我々の低侵襲手術は、顕微鏡を使った(マイクロサージャリー)で、椎間板摘出術(MLD)を代表に、棘突起間椎弓切除 (MID)、soft enveloped PLF、mini open PLIF、microscopic PSO、BKP、cortex bone trajectory PLIF(CBT)などがあります。脊椎のマイクロサージャリーの利点として1) 肉眼でできる手術は全て顕微鏡下での対応が可能であり、適応に制限はありません。2)皮切が小さく、美容上あるいは患者に対する心理的効果を期待できます。3)脊柱傍筋、特に多裂筋の損傷を最小限にとどめ、解剖学的構造や機能を温存できます。4) 明るい視野で、拡大した術野を得ることにより、深部の解剖学的構造の確認が容易となり、神経根、硬膜に対する操作を愛護的に行い、硬膜外静脈やvarixの確認が容易で出血を最小限に抑えることが可能です。5) 小さな術野で、神経根、硬膜およびその周囲に対する侵襲を少なくし、脂肪その他の脊柱管内軟部組織を温存することができます。6)合併症が少なく、臨床成績を均一にでき、手術時間を短縮可能です。これまで、なかなか結果を伴わないこともありましたが、今回の受賞を励みとして、精進し脊椎外科の発展に貢献できれば幸いです。本当にありがとうございました。
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- 平成6年3月
- 名古屋市立大学医学部 卒業
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- 平成6年4月
- 名市大整形外科 臨床研修医
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- 平成6年4月
- NTT西日本東海総合病院 整形外科
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- 平成9年4月
- 小牧市民病院 整形外科
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- 平成13年10月
- NTT西日本東海病院 整形外科
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- 平成17年4月
- 同上部長 脊椎脊髄センター長
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- 平成25年4月
- NTT西日本東海病院 副院長
- 日本整形外科学会専門医
- 脊髄脊椎病学会指導医
- 日本整形外科学会脊椎脊髄病医
- 名古屋市立大学臨床准教授
- 日本腰痛学会評議員
- 東海脊椎脊髄病研究会幹事
- 中部日本整形外科災害外科評議委員
- 中部MISt幹事