受賞報告
瑞友会賞受賞のご挨拶
この度は、第8回瑞友会賞(学術部門)受賞の栄誉に浴し、身に余る光栄に存じます。受賞にあたり、瑞友会の諸先生方、選考委員の先生方に心から御礼申し上げます。
受賞の対象となりました研究テーマは、『発がんに関与するGPX2遺伝子の解析 ―動物モデルからの同定とヒトがんの診断と治療への応用―』です。
がんの進展過程は多段階存在し、私たちは、動物モデルを用いてその様々な過程へアプローチすることにより、有効ながん進展抑制法の開発を目指しています。本研究は、発がん機序が異なる複数の乳腺発がん物質によって誘発したラット乳癌に共通して起こる遺伝子変化を抽出することにより、種の異なるヒトの乳腺発がん関連遺伝子の同定が可能となりうる、という着想のもと大学院時代に開始しました。その結果、ラット乳癌で恒常的に高発現している遺伝子として、酸化ストレス応答因子であるGPX2を同定し、ヒト乳癌においてもその増殖能や悪性度に深く関与していることを発見しました。現在までの約10年間の研究で、GPX2は肝および前立腺発がん過程においても重要な役割を担っていることが明らかとなり、最新の研究では、アンドロゲン枯渇下における前立腺癌の増殖にGPX2が関与し、ヒト前立腺癌の予後マーカーになりうることがわかりました。これらの知見は、有効な治療法のない去勢抵抗性ヒト前立腺癌の新たな治療戦略を考える上で重要な情報となり得、臨床応用の実現化に向けてさらなる解析を進めています。
これらの研究に携わる機会とご指導を賜りました諸先生方に深く感謝申し上げるとともに、今後とも変わらぬご指導ご鞭撻賜りますようお願い申し上げます。最後になりますが、瑞友会の益々の発展をお祈り申し上げます。