受賞報告

学術部門賞を受賞して

[会報122号(2014年9月29日発行)より]
愛知医科大学病理学講座 講師 稲熊真悟(H12卒)
愛知医科大学病理学講座 講師 稲熊真悟

この度は、第八回瑞友会賞(学術部門)という、栄誉ある賞をいただき、誠にありがとうございました。奥村恪郎会長はじめ、選考委員の先生方、また、これまでご指導賜りました諸先生方に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

受賞の対象となりました研究は、「膵発がん過程におけるヘッジホッグシグナルの重要性 ―GLI1転写標的遺伝子から見た膵発がん・進展メカニズム―」です。

近年、腫瘍の発生、維持、進展において、個体発生、形態形成を司るシグナル経路の重要性が認知されつつあり、特に難治性腫瘍である膵臓癌においては、Hedgehog (Hh)-GLI経路とKRAS経路の協調的活性化が重要であることが報告されています。

私どもは膵臓癌細胞株を用いて、転写因子GLI1の標的遺伝子を網羅的に解析し、gel-forming mucinの一種であるMUC5ACやbHLH type の転写抑制因子BHLHE41を同定、それらの機能解析や、腫瘍組織における発現解析を行ってきました。その結果、MUC5ACは細胞接着因子であるE-cadherinの機能を阻害し、膵癌細胞の浸潤・遊走能を増強すること、またBHLHE41はミスマッチ修復遺伝子MLH1の発現を抑制し、遺伝子異常を惹起することで、膵発がんを促進している可能性を明らかにいたしました。

腫瘍発生・進展のメカニズムを解析する基礎研究から、特異的治療薬を開発し、臨床応用に発展させるためには、乗り越えるべくハードルも多々あるかと思いますが、これからも精進して参りますので、瑞友会の諸先生方には、引き続きご指導賜りますようお願い申し上げます。

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