お知らせ

瑞友会会報149号(一部抜粋)です

2023.10.13

瑞友会会報149号より


同窓意識の昂揚



会長 松本 隆(S57卒)


 この会報が皆様のお手元に届くのは10月初旬かと思います。この秋、瑞友会にとって重要な二つの式典があります。10月15日(日)名古屋マリオットアソシアホテルで開催する「名古屋市立大学医学部創立80周年記念式典及び懇親会(医学研究科/瑞友会共催)」と、11月11日(土)ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋で開催する「第55回名古屋市立大学医学部同窓会(瑞友会)総会・講演会」です。すでに案内の葉書がお手元に届いていると思います。事前参加を申し込んでいない方々の「当日参加」も大歓迎です。奮ってご参加ください。


 80周年記念式典・懇親会では、75周年以降この5年間で新たに大学病院として加わった「東部医療センター」「西部医療センター」「みどり市民病院」「みらい光生病院」の関係者、「愛知県下の他大学医学部、医師会、行政の関係者」など広く招待し、交流の場にしたいと考えています。講演は、中日新聞社取締役社長「大島宇一郎」氏にお願いしてあります。5年間、本学は大いに発展し拡大しました。「同窓意識の昂揚」は「本学の発展」なしにはありえません。


 次に瑞友会総会です。今年は恒例の瑞友会賞受賞者の表彰に加え、「同窓意識の昂揚」に貢献したお二人の先生に「感謝状」を贈呈します。お一人は昭和51年卒の溝上雅史先生です。溝上先生は今年6月、世界で最も権威あるアカデミーの一つである「ローマ教皇庁科学アカデミー」の終身会員に選出されました。「肝炎ウイルスに関する研究」が評価されてのことと思います。終身会員は全世界で80名だけで、日本からは、山中伸弥/野依良治らノーベル賞受賞者を含め数名の方々のみです。もう一人は昭和60年卒の中西真先生です。中西先生は今年4月、東京大学医科学研究所の第29代所長に就任されました。「癌・細胞増殖分野」での研究業績に加え、「医科研での実績や人望」からの就任と思います。「東大医科研」は北里柴三郎が留学から帰国するためのポストとして福沢諭吉が創設した「伝染病研究所」がその前身です。


 「本学の発展」と「会員の活躍」。二つは、「同窓意識昂揚」のかなめです。ここ数年、両輪が大車輪で動き始めているのを感じています。瑞友会としてこれ以上の喜びはありません。二つの式典で、皆様方にお会いできることを楽しみにしています。


ローマ教皇庁科学アカデミー終身会員就任について



国立国際医療研究センター

ゲノム医科学プロジェクト長

溝上 雅史(S51)


 私を含めて多くの日本人は宗教とは関係ない日常生活を過ごし宗教を思い出すのは冠婚葬祭位であろう。その無宗教の私に2021年4月にVaticanのローマ教皇庁から“添付文書を見ろ”と極めて素っ気ないメールがきた。偽メールかと思ったが、開いたところ2021年11月にローマ教皇庁科学アカデミー(PAS)はCovid-19でWorkshopを開くので出席しろとある。他の出席者はハーバード大やWHOやNIH所長等のNatureやScienceに出てくる名前が多くあり、私如きが参加できる会ではないと思ったが、招待されたことには思い当たることがあった。


 国 立 国 際 医 療 研 究 セ ン タ ー(NCGM)はNational center の 一 つ で、感 染 症 も 主 要 なMissonで国際感染症センターが設置されている。そのため2019年のDiamond princess号以来、國土理事長をTopとする対策委員会が立ち上げられ毎週のように委員会が開催され、最新の疫学状況や各種治療法や予防について討議され対策に取り組んできた。


 我々は2007年頃から血清中のInterferon, Interleukin,Chemokine等を纏めてCytokineと総称し、炎症性と抗炎症性の2群に群別する新規概念が提唱された。我々はこの概念をウイルス性肝炎の予防・治療に応用できないか検討していた。


 2019年5月頃Covid-19感染者の20-30%が重症化しCytokine stormで死亡するとマスコミ等で騒がれPanic状態になっていた。この炎症性と抗炎症性Cytokineで、重症者と軽症者を識別可能ではないかと考え、国際感染症センター大曲部長に相談したら、“検体は用意するから直ぐやってくれ”ということで、各種手続きも迅速審査で通過した。


 実際に測定したのは副プロジェクト長の杉山真也君(現NCGMテニアトラック部長)で、ほぼ徹夜状態で約1週間で約800検体の測定結果を出した。その解析結果は、感染初期にCCL17が低い場合と感染中期にIFNλ3, IP-10が上昇した場合はその後重症化するという結果であった。直ちに論文化したが、当時出版業界もCovid-19でPanic状態にあり投稿しても受付さえして貰えない状況であった。恩師の五條堀先生に相談し“Gene” に投稿することになり、2022年1月にやっと Publish された。この論文は2023年2月迄Covid-19研 究 分 野 の 引用数上位1%の高被引用論文として引用され続けた。同時に某社がKit.化し、厚労省は2022年3月に保険採用し実用化された。Kit.化した会社は特許を申請し特許庁からは迅速審査に指定され2023年には特許が成立した。PASではこのことを喋れば良いなと思い、受けることにした。


 2021年11月4-5日 Workshop が開催された。私の出番は11月4日で最終的に演題名は”Virusvariation and evolution of virus”と指定されたが、Covid-19は元々 “ カゼ ” の Corona virus に属し、変異して過去にも何度も世界中で大流行を起こし、数年で終息してきた歴史を話し、重症化予防さえできれば怖い病気ではないことを強調した。大いに興味を引いたようで活発な討議になった。


 その後、22年3月にWorkshop時の座長から、PASのPresidentやChancellorがPAS会員に推薦したいとのことでCVと業績を送れとのメールがあった。Catholicに改宗する義務もなく、世界に向けて種々の提言を行うときに討議に参加する義務を負うのみで、これなら可能と書類を送った。その後、何の音沙汰もなく忘れていたところ、2023年6月にメールが来てPAS会員に選抜されたので各種書類を送れとある。上司の了解を得て書類を提出し7月にPASのHomepageに正式に掲載された。


 今後、PAS終身会員として世界に対する各種提言に関与できることを栄誉に思うし、その責務を名古屋市立大学同窓生として恥ずかしくないように努めたいと思っています。


ローマ教皇庁科学アカデミー(Academician of the Pontifical Academy of Sciences)について

瑞友会 松本 隆(S57卒)

 1603年に設立された「山猫学会(アッカデーミア・デイ・リンチェイ):ガリレオ・ガリレイも会員であった)」が前身。1936年ピウス11世によって、バチカン市国の科学アカデミーとして再生された。ローマ教皇庁とは、バチカン市国統治の中央機関。ローマ・カトリック教会の中央組織を兼ねることからローマ教皇庁と呼ばれるが、イタリアとは関係のないバチカンの独立した組織。数学・物理・自然科学や関連する認識論的問題の研究を推進するためのアカデミー。民族や宗教で差別されない、著名な科学者が会員。アカデミーに教皇庁の名を冠するのは、ローマ・カトリック教会が、このアカデミーに関心を持ち関与することを意味する。

*アカデミー(academy):科学・芸術などの専門教育機関、あるいは科学・芸術の専門家の集団としての学会、協会、研究所など。狭くは科学・芸術などの諸分野の振興のために、政府によって設立・庇護され運営されている国家的機関を示す。

概要

 本部はバチカン市国内の、ピウス4世宮殿に置かれている。現在、終身会員として世界で80名が選出されており、死亡で欠員が出た時のみ補充され会員数は一定に保たれている。新規会員は現会員の推薦を受けて立候補し、全会員の半数以上の賛成をもって選出され、ローマ教皇が任命する。

活動

「基礎科学」「世界的に関心の高い問題に関する科学・技術」「第三世界の問題に関する科学」「科学の倫理/政治学」「生命倫理」「認識論」の各分野に関して情報を発信している。ローマ教皇庁が運営しているが、会員は国籍、政治的立場、宗教の影響を受けず、自由に科学的な発信ができる。科学・技術に関し、世界に向けて権威あるアドバイスを提供している。総会は2年毎に開かれ、欠員を補充し新会員を決定する。次回総会は2024年で、溝上先生はじめ新会員は、ローマ教皇から直接メダルを授与される。

構成員(評議員)

 80名の終身会員(約半数はノーベル賞受賞者)を中心に構成される。日本人の終身会員は「山中伸弥医学博士」「野依良治理学博士」「五條堀孝理学博士」の3名であったが、今回「溝上雅史医学博士」が加わり4名となった。過去には、「湯川秀樹理学博士」「福井健一理学博士」らも会員であった。



東京大学医科学研究所所長就任のご挨拶



東京大学医科学研究所 中西 真(S60)


 瑞友会会員の皆様、東京大学医科学研究所の中西真です。本年4月に第29代東京大学医科学研究所所長を拝命いたしました。謹んで瑞友会会員の皆様に一言ご挨拶申し上げます。


 東京大学医科学研究所は1892年に初代所長北里柴三郎先生により設立されました大日本私立衛生会附属伝染病研究所を起源とする日本でも最古の医学研究所の1つです。北里先生がドイツのロベルト・コッホ博士の研究室でペスト菌を世界で初めて同定し、ノーベル賞の有力候補になって帰国された際に、慶應義塾大学の福澤諭吉先生が私財を投げ打って設立した研究所です。その後、東京大学に移管され改組を受けて現在の医科学研究所となり、感染症のみならずがんや、神経疾患などの多様な難治性疾患を対象とする幅広い分野を扱う医学研究所になりました。

 
 ここで少し自己紹介をさせていただきます。私は昭和60年に名古屋市立大学医学部を卒業し、その後1年間第一内科(武内俊彦教授)で研修を受けたのち、第二生化学教室(佐々木實教授)の大学院生となりました。自治医科大学、米国ベイラー医科大学、国立長寿医療研究センターを経たのち、1998年に母校に戻りました。2000年には佐々木教授の後任として細胞生化学教室(旧第二生化学教室)の教授に着任し、2016年からは現在の東京大学医科学研究所に勤務しております。名古屋市立大学在学中は、内科や生化学教室の先生方はもちろんのこと、分子医学研究所の加藤泰治先生や、病理学の白井智之先生といった同窓の先輩から研究のみならず様々なことで薫陶を受けました。諸先輩のご指導があればこそ現在の私があるのだと常々感謝しております。瑞友会の皆様にはこれまで二度寄稿文を掲載していただきました。一度目は母校の教授就任の際に、二度目は東京大学に異動する際です。今でも鮮明に覚えておりますが、一度目の寄稿の際にはオリジナリティーのある研究を目指したいことを、二度目の寄稿の際には55歳になって東京に研究室を構えるという新たな挑戦に対する意気込みを述べさせていただきました。今思うと少し気恥ずかしく思います。


 さて、医科学研究所では北里先生の教えである、1. 世の中の役に立つ実学研究、2. 基礎医学から臨床医学までを一気通貫で、3.予防医学こそが最良の医学である、が今でも研究指針の柱となっております。3つの基礎医科学部門と、生命科学分野で日本最大のスーパーコンピューターSHIROKANEを擁するヒトゲノム解析センターなど7つの研究センター、さらに先端医療開発のための附属病院を持つ総勢1000名程度の組織です。私の専門は老化学で、老化過程の分子基盤の解明から、老化細胞除去によるヒト若返り技術の開発までを、4名の教員、大学院生を含めて30名程度の教室員と日々研究を進めています。一方、所長職は研究とは異なり、全く新しい知識や考え方が必要で、東大全体の方針と歩調を合わせて毎日四苦八苦しながらの舵取りをしております。さらに現在、内閣府健康医療推進参与やムーンショットプロジェクトのプロジェクトマネージャなども拝命し、日本全体の医療行政にも関わらせていただいております。還暦を過ぎましたが、毎日が新たな勉強と思い、精一杯精進して参る所存です。どうぞこれからも瑞友会の皆様のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。


東京大学 医科学研究所について

瑞友会 松本 隆(S57卒)

 東京大学の付置研究所ということで東大医学部内の、比較的小さな施設を想像していました。実際は、港区白金台に約7万平方メートル(東京ドームは約4.7万平方メートル)の敷地を擁し、附属病院や多くの研究棟、テニスコートなどを持つ大きな施設です。

概要

 東 京 大 学 医 科 学 研 究 所(The institute ofMedical Science, The University of Tokyo:IMSUT)。東京大学の付置研究所。略称:「医科研」「東大医科研」「伝研」。年間予算は約176億円(2021年度)、職員702名、院生206名、研究生18名、その他(2022年)合計1000名以上。1967年設立。前身は1892年設立の「伝染病研究所」。

歴史

 1892年(明治25年):ドイツ留学から帰国する「北里柴三郎」を受け入れるため「福沢諭吉」が私財で設立した「私立伝染病研究所」(初代所長:北里柴三郎)が前身。設立当初から「附属病院」を有していた。

 1899年(明治29年):内務省所管の「国立伝染病研究所」となる。

 1914年(大正3年):内務省所管から、文部省に移管。東京帝国大学に合併される。これに伴い「北里柴三郎」「志賀潔」ら職員全員が辞職。

 1947年(昭和22年):厚生省「国立予防衛生研究所:現国立感染症研究所」が別途設置され、約半数の本研究所職員が移籍。東京帝国大学は東京大学となる。

 1967年(昭和42年):「感染症・がんその他の特定疾患に関する学理およびその応用の研究」を目的とする「医科学研究所」に改組・改名。

 2018年(平成30年):文部科学省国際共同利用・共同研究拠点に認定され、現在に至る。

目的

 生命現象の普遍的な真理と疾患原理を探求し、革新的な予防法・治療法の開発とその社会実装による人類社会全体への貢献を目指している。

構成

 自由な発想に基づく基礎・橋渡し研究を推進する基幹研究部門として、「基礎医科学部門」「癌・細胞増殖部門」「感染・免疫部門」の3部門が設置されている。この他「ヒトゲノム解析センター(国内最大の演算性能を持つスーパーコンピュータ(SHIROKANE)を擁する)」や「先端医療センター」など7センターと5研究施設が設置されている。


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