お知らせ

2021年度の瑞友会賞受賞者が決まりました。

2021.07.10

【社会部門賞】1名

1.溝上 雅史 氏(ミゾカミ マサシ、S51、国立国際医療研究センター研究所 ゲノム医学プロジェクト長)

受賞課題:各種肝炎ウイルス、COVID-19などウイルス感染症の診断・治療からゲノム治療まで、日本の医療に変革をもたらす原動力となる研究

概要:各種病原体と宿主における遺伝子変異の分子進化学的解析とその臨床応用。

1976年に名市大医学部を卒業・研修後、社会保険中京病院に赴任し、帰局後は当時遺伝研の五條堀孝博士から故木村資生先生の中立説による各種遺伝子解析手法を学びその応用研究を開始した。

1998年にHCVの遺伝子の一部が解読されて世界各地からのHCV遺伝子が多数報告されはじめたので、それらの遺伝子を使用して中立説の根本原理の一つである分子時計の手法で、HCVは感染後約30年で肝がんに進展することを明らかにした。この知見から、日本では1945年以降の戦争や敗戦に伴う社会的混乱によってHCVが拡散し、1975年頃からのHCV肝がんの急増に繋がっていることを明らかにした。

さらに、今後10-20年後に世界中でHCV肝がんが急増することの予防や治療の緊急性を2020年度のノーベル賞を受賞者NIHのDr. Harvey J. Alter博士との共同研究で明らかにした。これらの経緯から米国で開発されたHCV増殖抑制剤を用いた我が国での臨床開発治験を主導して100%の治癒率を得た。その成果は世界におけるHCV治療ガイドライン引用されている。

また、2015年には「臨床ゲノム情報統合データベースに関わる事業(MGeND)」に携わり、昨年からは国難ともいえるCOVID-19感染の重症化予測因子としてCCL17とIFN-λ3の有用性を発見し、本年3月には保険採用され社会に還元されている。


【学術部門賞】3名

1.富田 夏夫 氏(トミタ ナツオ、H13、名古屋市立大学大学院放射線医学分野 准教授(講師級))

受賞課題:各種悪性腫瘍に対する強度変調技術を主とした高精度放射線治療の精度管理と有効性に関する研究

概要:がん患者数は増加の一途であり、2017年のがん罹患数は98万人であった。このうち25-30万人が放射線治療を受けている。近年、強度変調放射線治療(IMRT)や画像誘導放射線治療(IGRT)、定位放射線治療(SRT)などの高精度放射線治療技術が急速に普及し、周囲正常組織への線量を低減させることで高線量の投与が可能となって治療成績を改善されてきたが、治療成績を改良するために放射線治療の精度管理は不可欠である。 富田氏は前立腺癌術後放射線治療における強度変調放射線治療(IMRT)等による高精度技術と有害事象の関係を確立した(Sci. Rep 2020)。またこの技術を用いて胸部放射線治療における肺動脈への線量が肺障害に関与することを世界で初めて示した。(Sci Rep 2020)。2008年以後2021年までに筆頭著者論文20報余を精力的に発表していて、高精度放射線治療の精度管理と有効性と発展研究に全力を集中している。


2.後藤 志信 氏(ゴトウ シノブ、教室会員、名古屋市立大学大学院医学研究科産婦人科学 助教)

受賞課題:子宮内膜機能に着目した不育症の新規治療戦略に向けた研究

概要:不育症とは繰り返す流産・死産により生児を得られない病態であり、発症頻度は約5%と決して稀な疾患ではない。その治療法として有効性が確立されているのは、原因疾患の3%を占める抗リン脂質抗体症候群に対する抗凝固療法のみである。97%は有効な治療法が確立されておらず、近年の少子高齢化社会において病態解析解明及び新規治療戦略の開発が急務である。本研究で着目している子宮内膜の妊娠維持機構は妊娠初期の子宮内環境に発症する様々な妊娠合併症の発症にも関わっているとされている。

研究課題は胎児を受け入れる母体組織である子宮内膜及び脱落膜の機能に焦点を当てて不育症の病態機序の解明を目指すものである。後藤氏は名古屋市立大学産婦人科不育症研究センターにける豊富なデータベース(不育症バイオマテリアルバンク)において、スウェーデン・カロリンスカ研究所への留学で得られた経験とネットワークを生かし、当センターのバイオバンク検体を用いて脱落膜組織における様々なサイトカインやプロテアーゼの発現を解析して原因不明不育症患者の病態機序についての新たな知見を世界に問いつつ、後の新規治療戦略の開発を実施している。


3.金光 禎寛 氏(カネミツ ヨシヒロ、教室会員、名古屋市立大学大学院医学研究科呼吸器・免疫アレルギー内科学 助教)

受賞課題:難治性喘息の病態におけるカプサイシン咳感受性の意義

概要:アレルギー性/Th2性気道炎症を反映する末梢血好酸球数、血清総IgE値、呼気一酸化窒素濃度等のデータは抗体治療の導入や予測に利用されているが、難治性の非アレルギー性/Th2性気道炎症における診断マーカーと治療法は確立されていない。金光氏は2015年に本学呼吸器・免疫アレルギー内科学に着任後、喘息・慢性咳嗽の臨床研究において、カプサイシン咳感受性の亢進は喘息の病態に関与し、それが治療マーカーとなることを見出した。それを治療判定指標として難治性の非アレルギー性/非Th2性気道炎症例において、長時間作用型抗コリン薬や気管支熱形成術(高周波電流によって気管支壁を暖めて平滑筋量を減少させ、気道収縮を軽減させる方法)によってカプサイシン咳感受性が改善されることを見出した。これによってカプサイシン咳感受性の亢進が非アレルギー性喘息患者の症状増悪に関連することを明らかにした。この新知見によって難治性の非アレルギー性/非Th2性気道炎症の治療の道を開いたことは意義深い。


【臨床部門賞】1名

1.牛込 創 氏(ウシゴメ ハジネ、H19、名古屋市立大学病院 病院助教(消化器外科) )

受賞課題:直腸がんに対するロボット手術

概要:直腸がんに対するロボット手術は近年保険適応となったばかりで課題は多い。牛込氏は名古屋市立大学では全国でもトップレベルでロボット手術に取り組んで症例を蓄積してきたが、裾野を広げるには教育者の育成は急務である。今後更なる増加が予想される直腸がんに対するロボット手術に対して、手技の向上や臨床的な研究に取り組み、若手のみならず教育者の育成も行なっている。

 直腸がんは狭い骨盤内深くに存在し手術難易度は高い。がんに近寄った切除となると局所再発率が上昇する事が分かっており、狭い骨盤内で行われる手術の質が患者の予後に与える影響は大きい。3D画像、多関節機能、手振れ防止機能を持ったロボット手術は直腸がんに非常に適していると考えられ、その進化とともに手術成績の一層の向上が期待される。一方で直腸がんでは直腸周囲の解剖を熟知していないとロボット手術の恩恵を十分に得る事は難しい。大阪国際がんセンターで学んだoncologicalな考えを盛り込みロボット手術の力を最大限に発揮する事によって直腸がんの治療成績を向上させて新たなエビデンスを構築し、若手のみならず教育者の育成も行える事が期待される。

がんの外科治療に関する論文も多くある。


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